【モーター回転だけで方向切換え】携帯電話用スイングギヤ機構
『ガラケー』の時代の携帯電話用・スライド機構です。
液晶部と操作部が2段になった機種用で、液晶部を電動でスライドする機構になります。
この機構の特長は、電動で開閉することが出来ますが、手動でも開閉できることです。
電動動作では開き側、閉じ側の2つのギヤ経路があり、太陽歯車を中心に、この2つの遊星歯車が揺動して、スライド方向を切り替えます。
またどちらへも繋がらない中立のポジションもあり、手動動作を可能にしています。
この3つの動作をモーターの回転方向だけで行う、コストダウンと省スペースを可能にした機構です。
機構の構成
具体的な動作を説明するにあたり、まずは大まかな構成を記載します。
モーターからの回転力をウォームとはすば歯車で減速し、太陽ギヤに繋がります。
太陽ギヤには左右2つの遊星ギヤが噛合い、遊星キャリアで繋がっています。
また太陽ギヤと遊星キャリアの間には、少しだけスリップトルクが発生する構成になっています。
そして2つの遊星ギヤの上側にはラックが配置してあり、遊星キャリアが少し回転すると遊星ギヤと噛み合うことが出来ます。
ラックには携帯の液晶側のユニットが取り付けられ、ラックが移動すると液晶が開閉する仕組みです。
通常は遊星ギヤとラックは噛合っていないので、液晶側は手動で自由に開閉することが出来ます。
動作説明
開く方向の動作を説明します。
太陽ギヤが左回転(CCW)すると、遊星ギヤは右回転をします。
同時に遊星キャリアも、太陽ギヤからのフリクションにより左回転します。
すると右側の遊星ギヤがラックと連結し、ラックを右方向へスライドさせることで、ラックに繋がった液晶側が開きます。
次に閉じる方向の説明です。
今度はモーターを逆転し、太陽ギヤを右回転(CW)させます。
同時に遊星キャリアも、太陽ギヤからのフリクションにより右回転します。
すると今度は左側の遊星ギヤがラックと噛み合い、ラックを左へスライドさせ、液晶側を閉じます。
◆導入に至った背景
手動でスライドするタイプが一般的でしたが、高級感を持たせるため、電動で開閉するタイプが求めらました。
また携帯電話として、サイズ、重量には大きな制限がありました。
◆解決策
通常は動力の伝達とは別に、正逆の切換え用のアクチュエーターが必要になります。
アクチュエータとしては主にソレノイドが使われ、吸引動作でギヤの伝達経路を切り替えたりしています。
今回は携帯電話のため、省スペースであることが求められ、アクチュエータ等の切換え部品を入れるスペースは有りませんでした。
そのため今回は、 モーターの正転/逆転の回転方向だけで、ギヤの連結方向が切り替わる機構を採用しました。
またモーター直結では、過負荷がかかった時に破損の恐れがあるため、ギヤ連結が外れる機能も有しています。
◆効果
少スペースで部品点数の少ないスライドモジュールを実現できました。
また機構の破損防止など、安全対策を考慮したスライドモジュールとなりました。
弊社で対応した業務
アイデア検討、3Dモデリング、機構設計、歯車設計、試作(樹脂)