【Solidworks】はすば歯車のモデリング(軸直角)

はすば歯車には、『歯直角』『軸直角』の2つの歯型があります。

一般的によく使われる『歯直角』のモデリングは先に記載しましたが、今回は『軸直角』のはすば歯車のモデリングになります。
  →→→歯直角のはすば歯車はこちら


『歯直角』と『軸直角』

おさらいとなりますが、『ねじれ角』に対して垂直な歯形の場合を『歯直角方式』、歯車の回転軸に対して垂直な歯形を『軸直角方式』といいます。

歯直角のモデリングの場合、ねじれ角の分だけ傾斜した面を作り、ここに歯型をスケッチしました。

対して軸直角のモデリングの場合は、特に傾斜した面は必要なく、名前のごとく軸に垂直な面に歯型をスケッチし、それを『捻じる』ことで作ります。


下の図は、歯直角と軸直角の違いを現したものになります。

上側の軸に対して斜めになっているのが、『歯直角』の場合の断面図。
下側の軸に対して垂直なのが『軸直角』の場合の盤面図です。

協育歯車工業(株) 技術資料より

図中の『P n』は『歯直角の時の1ピッチ』、『P t』は『軸直角の時の1ピッチ』を表しています。

『歯直角Pn』の場合は、ねじれ角βが変化しても1ピッチの寸法は変わりません。

しかし『軸直角Pt』の場合は、ねじれ角が大きくなるとPtも大きくなることが分かります。


歯を切る場合、歯筋の方向へカッターを動かします。

歯直角の場合は、平歯車のカッターを歯筋の方向へ傾けてカットすれば良いのですが、軸直角の場合は、歯筋の角度ごと歯型を変える必要があるのです。

これが軸直角の場合、コスト高につながる理由です。

そのためよほど大量でない限り、実際の設計で『軸直角』のはすば歯車を使うことはありません

単純に平歯車を捻じるだけでいいの?

では具体的なモデリング方法です。


軸に直角な歯車というと・・・平歯車です。

そうするとCADのモデリングの知識のある方ならば、「平歯車を単にスパイラス回転すれば良いのでは?」と思ます。

答えは、、はい、方法としてはその通りです。

しかも歯直角では必要となった、ねじれ角による影響を考えなくて良く、設計時の計算も簡単になります。

少し捕捉すると、歯車の元となる基準ピッチ円の大きさですが、

 歯直角はすば歯車=”モジュール”*”歯数”/cos(“ねじれ角”)
 軸直角はすば歯車=”モジュール”*”歯数”

となり、軸間距離もすっきりできます。

フレックス(Flex)コマンドで捻じる

Solidworks には『捻じる』コマンドがいくつかあります。

代表的なものは『歯直角』のはすば歯車でも使った<ヘリカル/スパイラスカーブ>です。

しかし折角なので、今回は別の<フレックス>(Flex)というコマンドを使用してみます。

<ヘリカル/スパイラルカーブ>が「ピッチと回転」でねじれ角を表すのに対し、<フレックス>コマンドは、「長さと角度」で表す必要があります。

関係式を登録する

歯車としては、まず平歯車を作れば良いのですから、平歯車の関係式を登録します。

それに『捻じれ』のための関係式を追加します。
「リード」は、フレックスコマンド用に直したものです。

“モジュール”  =1
“歯数”     =14
“圧力角”    =20deg
“歯幅”     =10
“ねじれ角”   =15deg
“リード”    =PI*(“モジュール”*”歯数”)/tan(“ねじれ角”)

実際のモデリング

途中までは「インボリュート歯車のモデリング」と同じなので、リンクを参照してください。

①母材の押し出し

インボリュート曲線で歯型の片側もスケッチが出来たら、歯車の母材を「押し出し」ます。

この時、押し出す量に『=”リード”』と、グローバル関数を指定します。

②片歯分をカットし歯数分を「円形パターン」で複写

平歯車のモデリングと同じ手順です。

「円形パターン」のインスタンスには、『=”歯数”』のグローバル関数を入れます。

次に「ミラー」で「円形パターン」を反転複写すると、軸長の長い平歯車が出来上がります。

③フレックスで捻じる

「挿入」→「フューチャー」→「フレックス」を選び、下図のパラメータを選びます。

「ねじれ」にチェックを入れ、「角度」を360度とします。

「トリム平面1」では、歯車のどこかの頂点を選んでください。

後はすべて 0 を入れ、okを押します。

これで1回転分だけ捻じれた歯車ができました。

角度360度の意味は、「リードの分だけ離れると、1回転する」という意味です。

この数値が『+』の時は『右ねじれ』となります。

『左ねじれ』の場合は、『-360』と入力してください。

④歯幅を合わせる

必要な歯幅まで「カット」をします。

「カット押し出し」で「オフセットサーフェス指定」を選び、量には『=”歯幅”』とグローバル関数を指定し、okを押します。

これで『軸直角方式』の『右ねじれ』のはすば歯車が完成します。



パラメーターを変更してみます。

先ほどとは 諸元の違う歯車にするため、<関係式>のパラメータを以下のように変更します。

歯数=45
ねじれ角=45

『左ねじれ』とするため、<フレックス>の角度を 「-360」と入力し、okを押します。

計算に少し時間がかかりますが図のように出来上がります。

その他の方法は・・・

今回は Solidworks の<Flex>コマンドを使ってみました。
実際にモデリングすると分かるのですが、このコマンドは計算に大変時間がかかります。

そこで他にも下の2つのモデリング方法を紹介しておきます。(関係式でのモデリングではありません)

1.<ヘリカル/スパイラル>で、ピッチとねじれ角を指定する
 スケッチした平歯車を、螺旋で立ち上げるものです。

2.<ロフト>を使う
 歯厚分オフセットした部分に、一定角度回転した平歯車をスケッチして、ロフトで繋ぐ手法です。

どちらも事前に『ねじれ角』からの回転角度を求めておく必要があります。


※Solidowrks を活用して設計した事例を、分野別にたくさん掲載しています。
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