【Solidworks】転位歯車のモデリング

Solidworks の「関係式」と「グローバル変数」を使って、インボリュート歯車のモデリングはできました。
 →→→こちらを参照

前回作ったのは標準的な平歯車ですが、同じ平歯車でも 『転位歯車』という種類があります。

今回はこの 『転位歯車』 のモデリングを行います。

但し、前回のような「関係式」「グローバル変数」などにより、Solidworksで任意の歯車を生成するものではありませんのでご了承ください。

*いつの日か、数式とCADのコマンドを十分に理解したら、やってみます。


転位歯車とは

『転位歯車』、歯車の基準となる基準ピッチ円を、外側又は内側にずらした歯車です。

歯車を加工するとき、工具の位置を少し前後させて加工することで、歯数はそのままで歯の形を変えることができます。

外側へ移動した場合を『プラス転位』、内側へ移動した場合を『マイナス転位』と呼びます。

そして移動する量を『転位量』と呼び、「モジュールに対する倍数」で表示します。

倍数とは言え、最大でも0.8倍程度までで、よく使うのは0.2~0.6倍といった所だと思います。
(+1.0倍の転位ということは、歯数を2枚増やすのと同じことになるためです)

例えば「転移量=+0.6」の歯車は、基準ピッチ円が外側へ「0.6×m」分だけ広がった歯車(半径で0.6×mなので、直径では1.2×m)です。

なぜ転位させるかというと、標準歯車には無い2つのメリットがあるからです。

  • 歯車の切り下げを回避できる

一般的な圧力角20度の歯車では歯数が17枚以下になると、理論上『切り下げ』『アンダーカット』が発生します。

『切り下げ』とは、歯元がえぐられて細くなることで、歯車の強度が低下します。

実際の加工では、歯数14枚までは切り下げが目立ちませんが、12枚、10枚といった少ない歯数を使う場合は、歯元の減少は際立ってきます。

この『えぐられた』部分を膨らませることができるのが、『プラス転位』です。

こちらの図が、『切り下げ』により歯元がえぐられた歯型になります。
(小原歯車株式会社 より抜粋)

そしてこちらが、プラス転位することによって、歯元が太くなった歯車です。

歯切りの工具を、外側(+側)へ移動することで、基準ピッチ円が大きくなっています。(小原歯車株式会社 より抜粋)

上図のようにプラス転位すると、x・m 分だけラック工具が離れます。
すると工具の歯元への入り込みが減るので、歯元が太くなると言うわけです。

その分 歯先は細くなるのですが、歯車にかかる力は「根本にかかる片持ち梁」と同じなので、極端に変形しない限り大丈夫です。


・軸間距離を調整できる

歯車は決まった距離でしか噛合うことができません。
そのため中心距離が決まっている場合、微妙な距離のズレを吸収する必要があります。

そんな時に転位歯車が利用できます。



転位とは基準ピッチ円をずらすことで、外側(+側)や内側(-側)へピッチ円をずらすことで、微妙な距離の調整に使うことができます。

転位歯車の歯型データを入手する

今回は Solidworks のコマンドで歯型を生成するのでは無く、無料の歯車計算ソフトを使わせてもらいます。

使うのは、技術者にとっての神サイトである、小原歯車株式会社の『歯車計算ソフトGCSW』です。

  →→→小原歯車サイトはこちら

小原歯車株式会社の歯車計算ソフトサイトを開きます。

計算ソフトメニューから「平・はすば歯車」を選ぶと、ソフトが立ち上がります。

今回は モジュール1,歯数12枚の平歯車を使用するとします。

歯数12枚では歯元に切り下げが起こるので、外側(+側)へ転位を行って歯元が広がった形状にします。
『転位係数』は0.5とします。

入力した表がこちらです。
大歯車には適当な歯数を入力してください。



入力が出来たら、中央付近にある 「歯型計算」のボタンを押します。
すると、歯型の拡大図が表示されます。

点線が基礎円、一点鎖線が基準ピッチ円になります。

歯数12枚の標準歯車の場合、切り下げにより歯元が痩せた形になりますが、+側へ転位を行ったためむしろ歯元が太くなって強度が増した歯型になっています。。


「かみあい図」のボタンを押してみましょう。

上側が転位を行った小歯車、下側が転位をしていない大歯車です。
バックラッシュゼロでも基準ピッチ円が離れているのが分かります。

+側に転位を行ったことで、その分小歯車が離れて噛合っていることが分かります。


参考として、転位を行わなかった場合の噛み合い図を見てみましょう。
下の図が転位係数ゼロの標準歯車の噛合い図です。

こちらも上側が小歯車、下側が大歯車。
一点鎖線の基準ピッチ円は一致しています。

そして小歯車の歯元は、切り下げにより痩せた形状になっているのが分かります。


今回は転位係数+0.5としました。
離れた距離は、「モジュール×転位係数」なので、「1×0.5=0.5mm」。
・・・これを『転位量』といいます。

それでは歯型のデータを出力します。

「歯車計算」の画面に戻り、「DXF出力」のボタンを押すと、転位された歯型がダウンロードされました。

転位歯型のモデリング

それではモデリングを行います。

ダウンロードしたDXFデータを、Solidworksで開きます。

DXFインポート画面が開くので、「新規部品へインポート」を選び「2Dスケッチ」をチェックして、「次へ」を押します。

次の画面では、「インポートデータの単位」を「ミリメーター」に変えて「次へ」→「完了」を押します。

すると歯車の片側だけのスケッチデータが開きます。
このスケッチを下書きとして使います。


新たなスケッチを開き、歯型のラインを「スプライン」で上書きします。
この時、スプラインの「制御点」を細かく選びすぎないようにしてください。
歯数が増えると、要素が多くなり計算に時間がかかるためです。

歯先円の位置で円を描き、スプラインを中心線でミラーすると、1枚分の歯型のスケッチが出来ます。

スケッチを終了して、歯先円のサイズで円筒をモデリングします。

次に円筒から歯型のスケッチラインをカットします。

カットした押し出しを、「円形パターン」で歯数分回転されると、転位歯車の出来上がりです。

※Solidowrks を活用して設計した事例を、分野別にたくさん掲載しています。
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