【DCモーター】 性能線図の見方
先回は機構の設計者から見た、「DCモーターの選定方法」を記載しました。
DCモーターの選定 →→→ こちらから
設計時の選定手順を記載しましたが、それでも分かりにくいのは、『定格を外れても使える』という所だと思います。
「定格を越えたら使えない」 と明確に判断出来ればいいのですが、DCモーターは「定格を越えても ある程度使えてしまう」のです。
そしてどの程度使えるかを判断するのが、今回の『モーターの性能線図』です。
先回のモーター選定と合わせて選定材料としてください。
モーター性能線図
まずはモーターの性能線図をみてみましょう。
記載にあたり web をいくつか見てみましたが、「五十嵐電機製作所」さんのグラフが非常に解り易かったので、そちらを流用しながら捕捉してみます。
五十嵐電機製作所 →→→ こちらから
沢山の線が入っています。 これを順番に説明していきましょう。
性能線図- トルクと回転数
まずは『トルクと回転数』の関係です。
性能線図の縦軸が『回転数』、横軸が『トルク』になります。
そして赤色の線が、トルクと回転数のグラフになります。
見ての通り、「無負荷時の回転数」と「停止時のトルク」を結んだ直線が『トルクと回転数』になります。
DCモーターは、トルクが上がると回転数がさがります。
『トルク』と『回転数』は反比例の関係です。
また図中の『ストールトルク』は、起動トルク、若しくは停動トルクとも言います。
DCモーターは、起動時に最大トルクを発生するのが良くわかります。
設計者としては、まずこの起動トルクの値を確認します。
先回の「モーターの選定」でも記載しましたが、この『起動トルクの半分程度のトルク』は使えると考えて大丈夫です。
性能線図- トルクと電流
次に『トルクと電流』の関係です。
性能線図の横軸は先ほどと同じ『トルク』、こんどは縦軸が『電流』になります。
赤い線の電流は、『トルク』が増えれば『電流』も直線的に増える正比例の関係です。
設計者として見ておくのは、「機構側の最大負荷時のとき、回路側に余裕はあるか」です。
仮に起動トルクの半分、グラフではトルクが0.4Nmの時の電流は、4.1Aほどです。
このぐらいは問題の無い回路である必要があります。
性能線図- 効率線
次は『効率線』です。
効率線とは、モーターの出力を電圧で割ったもので、「モーターがどれだけ効率よく使われているか」の指標です。
赤い曲線が『効率線』で、縦軸が『効率』、横軸が『トルク』になります。
見ての通り、効率が良い場所は、ずいぶんトルクの低い付近なのが解ります。
モーターの仕様には、『定格トルク』『定格回転数』の数値があります。
一般的には一番効率の良い点の値が『定格トルク』であり、その時の回転数が『定格回転数』となります。
このグラフでは青マルの位置で、効率75%といったところでしょうか。
設計者としては、機構の負荷がこの定格トルク辺りで収まれば、一番効率の良い製品になります。
かといって『定格トルク』でしか使えない訳ではありません。
グラフの通り、実際にはもっと上のトルクまで使えるのです。
とは言え、ストールトルク、起動トルク付近では、ほぼ停止しているくらいの回転速度になってしまいます。これでは動作しているとは言えません。
『起動トルクの半分ほどなら使える』としているのは、「トルクと動作速度のバランスを考慮した場合のエリア」と考えられます。
殆んどの製品の機構では、負荷に変動があります。
一時的であれば、少し時間がかかっても、大きなトルクが出るエリアを使わない手は無いと思います。
性能線図- 出力線
最後は『出力線』で、『W』で表され図中の赤い曲線が 出力線です。
出力Wは、『トルクと回転数の積』で求められ、回転数は角速度で表します。
例えば トルク0.1Nmの場合の出力は・・・
2000[rpm] × [2π/60] ×0.1[Nm]=21[W」となります。
この位置がほぼ最高効率のため、このモーターの定格出力は 21W となります。
そして何度も書きましたが、ストールトルクの半分程度、ここでは 0.4Nm 付近を、メカ側の最大負荷として設計をすることができます。
荷重の変化が少い動作ならば、効率の良い『定格』付近の値でモーター選定します。
反対に荷重変化が大きい場合、機構の『最大負荷』が、モーターの『最大出力』付近のものを選定するのが目安になります。
電圧が違う時は、換算してトルクを出す
設計者は、DCモーターの性能線図を見て、「そのモーターが使えるか、使えないか」を判断します。
一般的に性能線図は、『定格電圧』でのグラフになります。
しかし製品設計、機構設計の場合、「定格電圧だけではなく、電圧降下した場合でも動作すること」を求められます。
例えば 定格DC12Vの製品であれば、「DC9Vでも動作すること」と言った仕様が入っています。
それではDC9Vの性能線図を、メーカーからもらわないと進まないのでしょうか?
いいえ、『換算することで、別の性能線図は作る』ことが出来ます。
DCモーターは、電圧をに比例して『トルク-回転数』が変化します。
下のグラフはその説明になります。
電圧の比率分だけ『トルク-回転数』が変わっています。
そして電流は、その比率分だけ、直線が伸びるのです。
仮に黒色の線が12V、赤色の線が15Vとします。
すると、トルクも回転数も、15V÷12V=1.25倍に増えることになります。
こうして定格の性能線図があれば、どの電圧でもトルクや回転数を求めることが出来るのです。
※最終的なモーター選定については、利用するモーターメカーからアドバイスを受けてください。
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